旧ブログ名「こども園看護師あんちゃんのあはは!」から、新ブログ名「ゆっくり歩いていこう/大人ASDの娘の歩幅」に変わりました。2025.7.1

【体験記】LiD/APDの娘が選んだ聴覚支援機器|「ロジャー・フォーカスⅡ」購入と使用:娘の本音

APDと共に
このブログは、旧ブログ名「こども園看護師あんちゃんのあはは!」から、「ゆっくり歩いていこう/大人ASDの娘の歩幅」にリニューアルしました。
娘の歩みに寄り添う日々や、母としての気づきを、これからも綴っていきます。

「聞こえているのに、言葉がうまく理解できない」——
そんな娘の“困りごと”に気づきはじめたのは、大学生になってからでした。

診断名はLiD/APD(聴覚情報処理障害)
見た目や聴力に問題はなくても、会話の聞き取りに苦労することがある。

この記事では、LiD/APDの診断後に導入した聴覚支援機器「ロジャー」について、購入の経緯、使用機器の特徴、そして実際に使ってみてどうだったか――
娘との体験を、母の視点からまとめています。

「聞き返すのが苦手」「話についていけない」
そんな“困りごと”を抱える人にとって、ロジャーは、新しい一歩を支えてくれる選択肢になるかもしれません。

最後に、ロジャー・フォーカスⅡを3年半使用した娘の本音も載せています。

🎧 APDの聞き取りを助ける「補聴援助システム・ロジャー」とは?

 娘が診断されたLiD/APD(聴覚情報処理障害)は、耳ではちゃんと音をキャッチしているのに、脳でうまく処理できずに言葉として理解しにくいという特徴があります。

そのため、周囲がにぎやかな場所や、話す人の声が遠い場面では、聞き取りづらくなってしまうことも。

でも、見た目にはわかりづらく、普通に会話しているようにも見えるため、周囲から理解されにくく、本人は「わかったふり」や「笑ってごまかす」ことで乗り切ってしまうことも少なくありません。

PHONAK社のロジャーは、もともと難聴のある子どもたちのために開発されました。主に聴覚支援学校などの教育現場で使われてきた、実績と信頼性のある支援機器です。

 元々は、LiD/APD専用に作られたものではありませんでしたが、LiD/APDの方が実際に使ってみると、「聞こえるのにわからない」状況を改善できることが少しずつ分かってきたのです。

効果の裏付けには時間がかかりましたが、今ではLiD/APDへの有効性が認められ、多くの人に使われるようになっています


ロジャーシリーズにはさまざまな種類の機器がありますが、ここでお伝えするのは、補聴器や人工内耳を必要としない「ロジャー・フォーカスⅡ」シリーズについてです。

どちらもマイクで拾った音を耳元にダイレクトに届けてくれる“レシーバー”タイプの受信機で、娘のように聴力は正常だけど「聞き取り」に困難がある人に向いている機器です。


ロジャー・フォーカスⅡは2種類あり、違いは電源(電池式or充電式)です。

※出典:PHONAKカタログ(2023年3月31日現在)
ロジャー フォーカスⅡ-312
(電池式)
税込 ¥64,680
ロジャー フォーカスⅡ
(充電式)
税込 ¥87,780
電源 空気電池(PR41 / 312) 内蔵型リチウムイオン充電池
※専用充電器が必要(別売)
使用時間 最大52時間(通常の使用で1週間程度) 約20時間(フル充電まで約3時間)
ランニングコスト 電池:
補聴器店…8粒 約¥1,000
通販…30粒 約¥1,300
充電器(チャージャーBTE RIC)
税込 ¥12,606(別売)
メリット ・電池があればすぐ交換可能
・通販で手に入りやすい
・充電が簡単
・手が不自由でも扱いやすい
デメリット ・電池を携帯・管理する必要あり
・交換に慣れが必要
・充電切れ時は使用できない
・充電に時間がかかる
・充電池の劣化あり
・充電器がないと使えない

ロジャーフォーカスⅡをチェックする

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補聴器 電池 PR41 (312) をチェックする

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送信機には、以下の2機種があります :

ロジャー・フォーカスⅡに音声を届ける、送信機です。

2023年時点で娘が購入したものはロジャー・オン/セレクトでしたが、現在発売されているロジャー・オン3/セレクト3について、メーカーHPを参考にご説明します。

※出典:PHONAKカタログ(2023年3月31日現在)
ロジャーオン3
税込 ¥140,800
ロジャーセレクト3
税込 ¥140,800
マイク数 4か所 8か所
電源 充電式(USB-C)
3時間充電で約8時間使用
充電式(USB)
2時間充電で約8時間使用
通信距離 約25m(アプリ使用で最大50m) 約15m
接続方法 MyRogerMicアプリ対応 Bluetooth対応(通話も可能)
特徴 ・手に持って聞きたい方向に向けて使用
・3つのマイクモードを切り替え可能
・TVやPCとも接続できる(USB/音声ケーブル)
・机に置いて複数話者の声を拾える
・方向選択が可能(タップ切り替え)
・Zoomや通話などにも対応
サイズ/重さ W24×L100×H14mm/約27g 直径55mm×H12mm/約28g

ロジャーオン・セレクト3(送信機)をチェックする

ロジャーオン(楽天) ロジャーセレクト3(楽天)

🛠 試聴から購入までの流れ

医師に紹介状を書いてもらい、取り扱いのある補聴器センターへ。

同じLiD /APDでも必ずしもロジャーが合うわけではなく、本人に合うかどうかが重要なため、まずは試聴機のレンタルから始まリます。

レンタル期間は2週間ですが、
実際に手元にあったのは、店舗に届いてから返却までの実質1週間ほど

娘は購入予定の「電池式ロジャーフォーカスⅡ」を指定し、以下のセットをお借りました:

  • ロジャーフォーカスⅡ(電池式)×2台
  • ロジャーフォーカスⅡ専用ケース
  • ロジャーセレクト + 充電用コード
  • ロジャーセレクト用ポーチ
  • 交換用電池(8個入り)
    ※説明書の付属はなし

また、1台につき1万円の保証金が必要だったため、合計2万円を預けました。


一般的な補聴器と違い、ロジャーは個別の設定が不要
娘はそのまま装着してお店を出てきました。

すると、帰り道の電車の中からLINEが…

こんなに聞こえるなんてびっくり!嬉しい🎵

これを見た私は、思わずガッツポーズ!
「これでLiD/APDの悩みは解決だ〜!」なんて舞い上がっていたのですが……


その後、自宅に帰った娘がぽつり。

やっぱり、いいかどうかわからない。
電車の急ブレーキの音が、いつもより大きくて
鼓膜がおかしい(涙)
音量の調整ができないのが怖い。

……と、すっかりしょんぼり。

私まで一気に落ち込んでしまいかけましたが、どんなことにも突発的なことは起きるもの。
「そんなこともあるかもね?」と、頭を切り替え一緒に気持ちを整理しました。

また、説明書を詳しく読み、音量調整が可能なことがわかり、この点は解決しました。


レンタル期間中、なるべく多くの場面で試せるように工夫しました。

  • 大学の講義(2日間)
  • 自宅でテレビを視聴
  • ロジャーセレクトをBluetoothでPCに接続して、Zoom授業も体験

この中で、特に効果が大きかったのが大学の授業

今までより、ずっと聞き取りやすいから、
集中できる!

と、娘は嬉しそうでした。

もちろん、すべてが完璧ではなく、声が小さい先生の声が聞きづらいと感じることもありましたが、それは健常な耳でも同じ。
「それは仕方ないよね」と、前向きにとらえました。

実際に使ってみたことで、「慣れ」や「使いどころの見極め」が大事だということも、娘自身が実感していました。

📦 購入したロジャーが届いた!

試聴の結果、ロジャーは娘にとって必要なサポート機器になると確信し、購入を決断しました✨

購入したのは、こちらの3点:

  • ロジャーフォーカスⅡ-312(電池式・ベルベットブラック)×2台
     ¥64,680 × 2 = ¥129,360
  • ロジャーセレクト(シルバー)×1台
     ¥140,800

🔖 合計:¥270,160(税込)  ※娘購入時 2023年7月時点の価格

高価な買い物ではありますが、「聞こえづらさ」からくる困りごとをサポートできると信じて。

充電式ではなく、電池式を購入した理由は、出先での充電切れの心配がないから。
交換用電池さえ携帯していれば、いつでも交換できます。

交換用電池は、大手通販サイトで手軽に購入もできます。⇨上記「ロジャー・フォーカスⅡ/受信機」表参照


ロジャー・フォーカスⅡが到着〜!

📦 セット内容
(※写真は両耳・2セット分)

  • 耳栓掃除用ブラシ
  • 本体(電池式)
  • スリムチューブ4.0
  • 交換用耳栓
  • 専用ケース

🎨 カラー

電池式の本体カラーは3色から選べました。
試聴機はシルバーでしたが、娘が選んだのは「ベルベットブラック」

ほんのりマットな質感です。

”閉じている状態”
 =電源オン

ロジャーフォーカス

”開放している状態”
 =電源オフ

🔋 電池の挿入口が“電源スイッチ”

電池の蓋を開けると自動で電源OFFになるしくみなので、使わない時は開放しておけばOK。
電池の消耗を防げて、無駄なく使えます。

🔈 ボリューム調整もできる!

試聴機には説明書がなかったので気づかなかったのですが、
本体の上部を指で押すことで音量の調整が可能でした。
これで、大きすぎる音が気になった時にも安心。


続いて、送信機のロジャーセレクトも開封!

📦 セット内容

  • セレクト本体
  • 充電用スタンド(USBケーブル付き)
  • アナログ音声用コード
  • ホルダー(クリップ式/吊り下げ式)
  • 持ち運び用ポーチ

🎙 使い方の特徴

ロジャーセレクトには6か所のマイクが内蔵。
雑音をセーブし、話し手の声を自動で拾ってくれるだけでなく、手動で「聞きたい方向」を選ぶことも可能
起動している方向は、LEDライトでわかります。

💰 ロジャー購入にかかる費用と補助の現状

ロジャーを購入するにあたって、まず気になるのが費用面
実際に娘が購入したような、「受信機2台+送信機(セレクト)1台」のセットだと、
総額はだいたい27〜32万円前後になります。

🧾 受信機(ロジャーフォーカスⅡ)×2台

¥64,680 × 2 = ¥129,360
※片耳でも可能。娘は試着の期間に試して、両耳の購入に決めました。

📡 送信機(ロジャーセレクト)×1台

¥140,800

この金額だけを見ると、やっぱり簡単に手が出るものではありません。
そこで、「補助はあるの?」というのが、多くの方の疑問かと思います。


ロジャーは、元々は補聴器のように「補装具」として扱われることが多い機器です。
そのため、自治体によっては
「補装具費支給制度」の“特例補装具”という扱いになるケースもあります。

「補装具費支給制度」の“特例補装具”とは?

障害者が日常生活を送る上で必要な移動等の確保や、就労場面における能率の向上を図ること及び障害児が将来、社会人として独立自活するための素地を育成助長することを目的として、身体の欠損又は損なわれた身体機能を補完・代替する用具(別紙「補装具種目一覧」を参照)について、同一の月に購入等に要した費用の額(基準額)を合計した額から、当該補装具費支給対象者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して政令で定める額(政令で定める額が基準額を合計した額の百分の十を超えるときは、基準額に百分の十を乗じた額)を控除して得た額(補装具費)を支給する。

厚生労働省 補装具費支給制度の概要 1.制度の概要より

補装具というのは、つまり、

日常生活やお仕事の場面で、困りごとをサポートしてくれる道具のこと。

たとえば、補聴器や義足、車いすなどがそれにあたります。
こういった道具を使うことで、障害のある方がより自立して過ごせるように、必要な費用の一部を国や自治体が助けてくれる仕組みがあります。
補助の金額は、決まっている基準の価格から、世帯の収入などに応じた自己負担分を引いた額。つまり、自己負担をなるべく抑えて、必要なものを手に入れられるようにサポートしてくれる制度なんですね。

ただし……ここがポイントなのですが、現在
LiD/APD(聴覚情報処理障害/聞き取り困難症)は、身体障害者の対象外とされている。
そのため、現時点では、多くの自治体でLiD/APDはこの補助の対象外となっているのが現状です。

私たちが住む街も、やはり対象外でした。
でも、望みをかけて市の担当課に何度か問い合わせ、検討していただくようにお願いもしましたが、そもそものLiD/APDの説明から始まるのが現状でした。

福祉の担当者も知らない現実を知り、改めて、LiD/APDの社会的な認知の低さを思い知りました。


 私たちの地域では助成の対象にならなかったのですが、
一部の自治体では、独自に助成や貸出制度を検討・実施している動きもあるそうです。

将来的に、LiD/APDへの社会的な認知が進むことで、「見えない困難」への理解が高まり、このような機器に対する支援の輪が広がっていくことを願っています。

購入前にチェック!

お住まいの自治体の福祉課や障害福祉窓口に問い合わせてみるのも一つの手です。

条件が合えば、助成が受けられる可能性もあります。


そんな中で、娘が今回利用できたのは、
【学生向けの“15%割引”】でした!

店舗の担当の方が、購入時に教えてくださいました。

これは自治体の制度ではなく、購入先の店舗独自の対応だったようで、
「全国で共通の制度かどうか」は分かりませんが、我が家は大いに助かりました!

調べると、季節や年齢などにより、店舗ごとのキャンペーンもあるようです。

購入を検討される際は、
直接、販売店に問い合わせてみるのもいいかもしれません。


  • 💸 ロジャーセットの価格は約27〜32万円
  • 🏛 LiD/APDは身体障害に該当せず、多くの自治体では補助対象外
  • 🎓 娘は購入店の学生割引(15%オフ)を利用できた
  • 📍 地域によっては助成の動きも。事前に情報を確認するのが安心

✍️まとめ:ロジャー購入を考える方へ

 良くも悪くも「困りごと」に慣れてしまっている娘は、当初、ロジャーの購入に前向きではありませんでした。

たいていのことは「どうせ無理だろう」と思い諦めてしまいがち。

しかし、使用しはじめて3年が経った今、ロジャーは娘にとって大きな支えになってくれています。

聴こえの助けだけではなく、他者からは見えにくい自分の「困りごと」を相手に伝えることが少しできるようにもなり、娘にとって踏み出しの一歩であったと感じています。

とはいえ、決して安い買い物ではありません。
そして今のところ、この機器への補助制度が整っていない地域も多いのが現状です。

それでも——

  • 購入前に試聴して確かめられること
  • 自治体によっては助成や貸出の動きがあること
  • 学生割引などの制度が店舗独自にある場合もあること

こうした小さな希望が、少しずつ背中を押してくれることもあります。

同じように「聞き取れないつらさ」と向き合っている方にとって、
この記事が、何かのヒントやきっかけになればうれしいです。

☝️番外編:ロジャーを3年使用した娘の本音

📚 番外編:ロジャーを3年使ってみて、娘の本音

Q:どんな使い方をしてる?
聞きたい声がはっきりしている時に使う。
大学の授業、バイト、グループワークなど。

Q:どんな場面で使ってる?
主に学校。特に大講堂やグループワーク。
普通の教室では前の席なら使わない。
家では映画を観るとき。

Q:向かない場面は?
家で家族がそれぞれ動いている時や、
広い会場で複数人が話す場面。

Q:使う時に気をつけてることは?
「聞き取りが苦手なので」と断ってから使う。
今まで嫌がられたことはない。

Q:購入して良かった?
⭕️ 使う頻度は思ったより少ないけど、
効果が大きい時があるから。

Q:もう一度買う?
たぶん買う。費用次第だけど、
必要ならまた選ぶと思う。

Q:LiD/APDの人におすすめ?
一概には言えないけど、
使う場面が多い人には効果があると思う。

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